研修・教育制度について
専門研修
専門研修の1年目の研修は、主に病棟研修を行います。病棟業務に慣れた6月以降,①心臓カテーテル検査・治療、②不整脈、③心臓リハビリテーション、④超音波検査、⑤末梢血管治療の5のコースを2ヶ月毎にローテーションします。また、一ヶ月間の総合診療科への出向があり、一般内科の初療対応から専門科へのトリアージについて学びます。入局2年目には集中治療室(CCU)のローテーションを2~3ヶ月間行い、一般病棟での当直を含め循環器領域を中心とした1次から3次までの救急診療の研修を行います。
非常勤勤務(アルバイト)は1日可能で当科と関連する病院を紹介します。外勤当直アルバイトも紹介しており、当科の関連病院のみであり比較的余裕のある当直業務内容となっています。専修医の給与とあわせて、家庭のある専修医でも余裕をもって家族を支えられます。で専門分野が決定すれば、病棟業務と各専門グループの診療業務を平行して行うことも可能です。
当科の専門研修のプログラムの特徴の一つとして、多くの検査・治療手技を上級医の指導で行えることがあります。PCIやアブレーションなどの治療を行う患者の主治医には治療専門医とともに術衣を着て治療に積極的に参加してもらいます。他の病院と比較しても、かなり多くの症例数を経験し取得できる内容となっています。
専門研修1年目ローテーション
- 心臓カテーテル検査:冠動脈造影、IVUS、血管内視鏡、PCI、PTSMAなど
- 不整脈:心臓電気生理学検査、カテーテルアブレーション
- 心臓リハビリテーション(虚血性心疾患、心不全、大血管疾患など)
- 超音波検査:心臓(経胸壁、経食道)、負荷心エコー、各血管エコー
- 末梢血管:骨髄幹細胞治療、マゴット療法など
Tuesday Meetingと病棟回診
毎週火曜日の 8:00~9:00は、循環器内科と心臓血管集中治療科を含めた教室全体のカンファランスが開催されます。教授・准教授・講師陣によるレクチャー、症例報告、学会発表の予演会、抄読会が行われます。その後は、清水教授・宮本教授・浅井准教授による病棟回診が行われます。回診では、主治医よりベッドサイドでプレゼンテーションが行われ、治療経過の報告と治療方針についての確認やアドバイスを受けます。診療体制
当科では、4つのグループが2つのチームに分かれて(1チーム2グループ)、病棟診療を行っています。毎週月曜日の夕方より各チームにわかれて病棟カンファランスを行い、すべての入院患者の治療経過を主治医よりプレゼンテーションを行い治療方針について話し合います。
当科のグループ診療体制は、一人の患者につき担当医が割り当てられ主治医として診療にあたり、主体性と責任感を養ってもらうとともに屋根瓦方式の形をとり、治療経過や治療方針について随時相談が可能であり病棟カンファランスとは別にグループ単位で週に一度カンファランスを行います。グループには、各専門の医師が配属されており、カンファランスで患者の病状についてディスカッションを行います。
グループ内の患者はお互いに情報共有を行い、検査や外勤で不在のときにも診療が滞ることがないようにしています。大学当直は、月により異なりますが、平均 で平日は3~4回、土曜日と日曜日が各1回ずつとなります。当直は専修期間中、循環器内科の一般病棟および循環器疾患の救急外来が主体となりますが、上級医を含む3名体制で臨んでおります。年間で合計2週間の休暇がありお互いにスケジュールを調整し取得しています。
当科で取得可能な専門医資格
当教室は、多くの専門医が臨床教育を指導しており、多彩な症例を経験できます。そして、幅広い分野の知識とスキルだけではなく、総合内科専門医を始め、希望と努力によって循環器専門医に加え、サブスペシャリストとしての不整脈専門医、心血管インターベンション治療学会認定医、集中治療専門医など様々な専門医の資格を取得できます。
日本内科学会認定内科医 | 日本内科学会総合内科専門医 |
日本循環器学会循環器専門医 | 日本老年病学会老年医学専門医 |
日本不整脈学会不整脈専門医 | 日本集中治療学会集中治療専門医 |
日本血管心インターベンション治療学会 認定医・専門医 |
日本超音波医学会超音波専門医 |
日本脈管学会認定脈管専門医 | 日本禁煙学会認定指導医・専門医 |
日本糖尿病学会糖尿病専門医 | 高気圧酸素療法専門医 |
再生医療認定医 |
げんてん会について
当科では、旧第一内科時代より、医局出身のOB・OGと現役医局員による”げんてん会”と呼ばれる同窓会を毎年開催しております。平成2年2月より日本医大第一内科同窓会を「原典(げんてん)会」という名称で呼ぶことが決められました。これは本学の循環器内科学教室としての礎を作った第5代教授である木村栄一先生が、東京大学在学中に恩師で皮膚科の教授であった太田正雄先生の「原典に帰れ」という言葉を大切に引用されていたことに因んでいます。木村先生は、この「原典に帰れ。」という言葉について、下記のような文章を後輩の医局員に対し残しています。
「原点に帰れということ、行と行のあいだをよめということは、あるいみ極めて能率が悪いことであって、ある意味現今の風潮と異なる。しかし、それでなければ研究・学問における新たな飛躍はのぞめない。そのいみで私はこの言葉を、私のあとにつづいてくる人々におくりたい。」
研究活動
別途、後述するように、各研究グループが活発に研究活動を行っています。国際学会は、American Heart Association、American College of Cardiology、European Society of Cardiologyに毎年発表実績があり、発表者には渡航費用・学会費用の一部は補助がでます。国内外での学会発表はもちろん、充実した臨床研修を行いながら、論文執筆も行い、著明な英文医学雑誌に発表された原著論文が増加しています。 以下に現在当科で行われている主な研究内容を示します。
当科研究内容
- 慢性心房細動に対する至適な高周波カテーテル焼灼術の開発
- 三次元マッピング機器を用いた開心術後心房頻拍の機序解明と治療法の開発
- 器質的心疾患に合併した重症心室性不整脈の薬物療法および非薬物治療(高周波カテーテル焼灼術、デバイス治療)の検討
- 遺伝性不整脈疾患(QT延長症候群、ブルガダ症候群など)の遺伝子診断とこれに基づいた薬物および非薬物治療
- 次世代シーケンサを用いた網羅的全エクソン(Exome)解析、全ゲノム解析、ゲノムワイド関連解析(GWAS)による遺伝性不整脈の新規遺伝子同定
- iPS細胞を用いた遺伝性不整脈の病態解明とテーラーメイド治療
- 心電図Wavelet解析を用いて心サルコイドーシスの病態進行評価
- 経皮的冠動脈インターベンション治療(PCI)時に発生する心筋傷害に対する高用量スタチンの前投与の効果
- 急性冠症候群の発生機序を解明:PET-冠動脈CT融合画像により非侵襲的に検出される炎症に富む冠動脈プラークと血管内視鏡・optical coherence tomographyなどの血管内画像診断による組織特性との対比からの検討
- 拡張型心筋症患者の予後の検討:心筋生検によって得られる組織診断、核磁気共鳴画像の遅延造影効果、心筋脂肪酸代謝障害からの検討
- カテーテルによる肥大型心筋症の心筋焼灼術後の左室形態と血行動態の変化の検討
- 心肥大・心不全進展過程におけるβ3アドレナリン受容体情報伝達系の心保護作用に関する検討
- エリスロポエチンによる心筋保護効果に関する研究
- 心疾患病態・血管内皮機能関係に影響する因子の検討
- 運動療法による心疾患病態に対する改善効果の機序
- 心疾患合併高血圧症における中心血圧と病態との関連
- 自己骨髄細胞による血管新生療法と徐放化増殖因子ハイドロゲルによる血管再生治療
- マゴットセラピー法(無菌性医用うじ虫治療)の活用
- 組織ドプラ、スペックルトラッキング法を用いた心機能評価:心臓再同期療法、大動脈壁の硬さ、左右心機能
関連病院と留学
当教室は、千駄木(東京都文京区)・北総(千葉県印西市)・武蔵小杉(神奈川県川崎市)・多摩永山(東京都多摩市)の付属4病院に医局員のポジションを確保しています。付属4病院はそれぞれに特徴を有しており希望によって各病院での研修が可能です。
関連病院は主に都内近郊(文京区・墨田区・足立区・八王子市・府中市)のほか、静岡・大阪などにあり、専門性を生かした研修に適した病院がラインナップされています。派遣先の病院の循環器の部長・責任者および多くのスタッフは当科所属の医師であり、大学病院と比べても劣ることのない指導のもと臨床経験を積むことができます。
これまで下記のような国内外の有数の施設に常時数名の留学者を出しています。本人の希望や時期が合い、要件を満たせば、海外留学も可能です。将来留学を考 えている先生は、多くの留学経験者より、留学先の紹介をはじめ、渡航手続き、留学中、帰国までの間充実した研究ができるようにアドバイス可能であり全面的 に支援します。
留学先一覧
<欧州>
1. Hopital Lariboisire, Paris, France
2. Institute National de la Santa et Recherche Medicale, U24,Paris, France
3. St. George's Hospital Medical School, Cranmer Terrace, London, UK
4. St.Thomas’ Hospital,The Rayne Institute, Cardiovascular Research,, London, UK
<北米>
5. Harvad Medical School, Boston, MA, USA
6. Harvard-MIT Division of Health Science and technology, Cambridge, MA,USA
7. Tuft Univ. Boston, MA, USA
8. Univ. of Rochester, NY, USA
9. Penn State College of Medicine PA, USA
10. University of Medicine and Dentistry of New Jersey, Newark ,NJ, USA
11. Skirball Center of Cardiovascular Research, NY, USA
12. Cornel Univ. Cardiology Dept, NY, USA
13. St Luke's-Roosevelt Hospital, University Hospital of Columbia University, NY, USA
14. State University of New York, Syracuse, NY,USA
15. National Institute of Health, NHLBI&NIDCR, Bethesda, MD, USA
16. St. Louis Univ. Core ECG Lab LA, USA
17. The University of Louisville, Louisville, KY , USA
18. University of Kentucky, Lexington,, KY, USA
19. Krannert Institute of Cardiology (KIC), Indianapolis, IN, USA
20. University of Cincinnati, OH, USA
21. Emory University, Atlanta, GA, USA
22. Cedars-Sinai Medical Center, CA. USA
23. University of California, Los Angeles, CA, USA
24. The Scripps Research Institute, CA,USA
25. The University de Montreal, Montreal QC, Canada
<豪州>
26. New South Wales Univ. Inflammatory Diseases Research Unit. Sydney, AU
27. University of Auckland, Auckland ,NZ
<国内>
28. 東京大学理化学研究所
29. 東京医科歯科大学難治疾患研究所循環器部
30. 国立循環器病研究センター
31. 心臓血管研究所
32. 藤田保健衛生大学
女性医師の入局希望者の方へ
出産・育児を経た復職経験者が多いため、様々な復職支援を行っています。出産育児期間中もキャリアを継続したい人には全面支援付属4病院と関連病院などのポジションを生かして、短時間勤務などを活用可能です。要件を満たせば、留学も可能です。
フルタイムではなくても、自身のライフスタイルに合わせて、知識とスキルの維持のために診療業務に参加される方も歓迎しています。
循環器内科の専門技術の取得には「きつくて、辛くて、帰れない」厳しい時期もありますが、心電図判読・超音波診断・リハビリテーション・エビデンスに基づいた心血管疾患の1次予防・2次予防など、育児期間中もスキルアップができ、身近な診療に役に立つ知識が得られることも魅力でもあります。
また、旧・第一内科の頃から長い伝統に養われた女性医師同士の別途ワークがあり、困った時にはお互い助け合っていける環境があります。
「医学部教育(6年間)」+「初期研修」+「専門研修」で養った知識とスキルは、皆さんの大切な財産です!細々でも絶やすことなく、生涯にわたって研修を続けられるようにサポートします。